人が育つ”場”をつくる!「ウチダシステムズの人財育成」


1967年(昭和42)年に創業し、オフィス・学校・福祉施設の3つの場、3つの市場で事業を展開してきたウチダシステムズ様。お客様にとっての最善な「場」づくりをお手伝いしています。「『場』づくりを通じて成果向上と組織文化の発展に貢献し、働く、学ぶ、生きるを楽しく豊かにする!」という想いのもと、企画・コンサルティングから設計、構築、運用までトータルな製品・サービス・システムをご提供されています。
内田洋行グループの一員として、変化の激しい時代に対応できるよう、人財育成にも力を入れております。本記事ではウチダシステムズ代表取締役社長岩田様と人事総務部次長の渡辺様に、ウチダシステムズ様のこれまでの歩みから、主に若手人財育成の考え方、具体的な取組み、今後の展望などについてお話を伺いしました。
株式会社ウチダシステムズ
代表取締役社長 岩田 正晴 様
経営推進グループ 人事総務部 人事総務課 次長 渡辺 千砂子 様
ウチダシステムズと岩田社長の歩み
岩田社長:私は2008年から、現在のウチダシステムズの前身である「東京ウチダシステム」の社長となりました。もともと45名体制の会社を60名体制にして販売力を強化しこれから打って出ようとした矢先に、リーマンショックに直撃されました。社長就任後の業績は、売上半減利益半減という苦しいスタートでした。これからどうすればいいのか?繰り返し自分自身に問いかけました。結果、これは、もうお客様の側に立ってそこを基盤とした経営のメカニズムに作り直すしかない、つまりは本質的な顧客志向で行くべきである、と最終的に自分の中で決めました。ただこれを実行する上で「組織の能力が果たして追いつくだろうか?」という疑問がありました。

当時、社員の多くは体系的な教育を受けていませんでした。そういった背景のなかで中長期的に組織能力をいかに向上させていくか、どのように育成していくかという事が最初のポイントになると判断しました。このことを実現するためには、まずは社員にいかに働きかけていくかを考える必要がありました。また当時、業績不振という事もあり社内には課題が山積していました。その根本的な原因を管理職たちと追求していくと、やはり社員を育成する仕組みが欠けていたことに気づかされました。であればまずは、社員全員が成長できるようにしていく、管理職もそこに関わっていく、組織全体をレベルアップしていく事から始めるべきである。その基盤があって、初めて、社員全員が顧客起点で物事を考え、当時自社開発した需要創造型営業を進めることが出来るのではないか、まずはそこからベクトルを合わせていこうと考えました。
自ら動くプロセスに変える!
岩田社長:「売れるものを自分たちで探しに行こう!」ということで、商材発掘プロジェクト(WINWINプロジェクト)を始めました。チーム毎にマーケットを調査し、市場ニーズにマッチした商材を自ら探し出し、それをどのように販売し、どれくらい収益を生み出すかを企画するものです。その後「調査してみた商材をどうやって発表しよう?」となり、初の単独フェアを計画しました。果たしてお客様が集まるのか、不安がありましたが、社員、スタッフも一丸となって準備から開催まで行いました。
商材発掘プロジェクト(WINWINプロジェクト)と人財育成
岩田社長:この商材発掘プロジェクト(WINWINプロジェクト)には、人財育成の側面も大いにありました。プロジェクトを運営するには、リーダーシップを発揮するチームリーダーの存在が不可欠です。また、メンバー同士がコミュニケーションを取りながら、それぞれの考えを発散させ、議論を収束させて、一つのアイディアを打ち出すというプロセスを経験します。この過程で、コラボレーションスキルが培われるとともに、「100%の商材に、いかに付加価値を加えて120%にするか」という営業的なプレゼンテーションスキルも磨かれます。つまり、商材発掘という目的の中に、人財育成の目的を重ね合わせているのです。さらに、単独フェアの開催にあたっては、運営から企画、勧誘までをすべて自分たちで担いました。それぞれが役割を認識し、全員で協力して一つの成果を成し遂げることを狙ったのです。その結果、700社ものお客様にご来場いただき、自社のお客様と現在の実力を知る機会となりました。その喜びと達成感とを通じて、ひとつの風土・文化が出来上がってきました。
社員一丸となり新卒採用
岩田社長:2013年に全国販社統合を成し、新卒採用の活動を開始しました。翌2014年から新卒社員の入社が始まり、以降、ウチダ人材開発センタに依頼して、新入社員研修はもちろん、ICT基礎研修やソリューション研修も実施しています。さらに2年次3年次のフォロー研修へと移行する研修体系を、新卒採用活動をベースに作りました。中小企業である当社への入社を決断してくれた新卒社員に対して、「絶対に上場企業と変わらない、それ以上の教育をしてあげよう」と。また、キャリア採用社員も新卒社員と同程度の人数を毎年継続して採用しており、リーダー育成プログラムには、適性に応じてキャリア人財にも参加してもらうことがあります。
渡辺様:新卒採用では、「学生が当社の何を評価して入社を決めているのか」ということを見ています。特に多くの学生から共感を得ているのが「ウチダシステムズらしさ」。価値観に共感して当社を選ぶ学生が増えてきています。「らしさ」を感じる場面は、会社説明会・オフィスツアーで挨拶をされた時や、社員同士のコミュニケーションの様子を見た時などです。また、もう一つの大きな要素として、若手社員や先輩社員の説明会への参加があります。先輩社員と触れ合うことで、当社のエッセンスや当社らしさを聞き、体感して、そこに共感したから入社したいという声をよく聞きます。例えば、「話を聞いた○○さん・○○さんの考え方や大切にしていることと自分の価値観が一致したことが決め手だった。」というような話も聞かれました。

岩田社長:学生から「こんなに挨拶してもらえる会社に出会ったのは初めてです」と言われます。会社説明会やオフィスツアー後の感想文には、必ずと言っていいほど記述が見られます。私たちも、おもてなしの姿勢や挨拶といった基本的なことを大切にしています。新入社員には、新卒、キャリアとも入社時講話を必ず実施し、ウチダシステムズの考え方と作法をかなり意識して伝えています。
渡辺様:採用活動は企業が学生を選ぶだけでなく、学生が企業を選ぶ場でもあります。今お話しした「当社が大切にしていること」は、当社も学生も自然と相手を選び、お互いが相思相愛となることに大いに貢献しています。一方、社員は学生と話をする時に、「今、私どうしているかな、何しているかな、どんな思いでやっているのかな?」と自らを振り返ります。採用活動そのものが、今の若手社員の育つ場でもあり、機会でもあります。それが入社前の学生に「こういう人になりたい」と思わせるロールモデルとなることに関わっていると思います。
人財育成=「人が育つ場をつくる」こと
岩田社長:人財育成とは「人が育つ場をつくること」だと私は考えています。例えば、チャンスを与えるということも一つの「育つ場」です。実際、当社では毎年、新入営業職社員の最初の配属は、新人だけでゼロからの新規開拓を行うチームです。これを行うようになってから、辞める人が少なくなりました。新入社員の時に最も困難な経験を積むこと、これが将来への財産になります。
我々は「場づくり」という創発的な事業に取り組んでいます。「場」と名の付くものだけでなく、「組織の風土を作っていく」というところも売りにしている。したがって「うちではこういう場で社員が育っているのです」と示すことが重要であり、実際に人が育っている姿を見せなければ説得力がありません。例えば、ウチダシステムズフェアも、商品を展示することだけが目的なのではなく、人の活力を見せることがイベントのもう一つの目的です。この事業をやっているからこその必然なのかもしれないですね。
渡辺様:フェアでもプロジェクトにおいても、1年目社員の出番も多いですよね。

若手人財の育成
岩田社長:学校教育は大きく変化しており、我々の時代とは様変わりしています。ツールの導入が進み、アクティブラーニングを中心とした体験的学習が主流となっています。これから社会に出てくるのは共同作業をベースに育ってきた世代であり、いわゆる個人商店的な思考を持つ人はあまり多くありません。その人が持っている可能性、すなわちイノベーティブな思考やチャレンジ思考を邪魔しないことを常に意識しています。自分たちの能力を基準に「これは無理だろう」「これはできるだろう」と判断するのではなく、「自分たちより何でもできる」と考え、様々なことをやらせてくれと、教育担当者には指導しています。
もう一つ我々が目指していることは、「たとえ転職してどの業界に行っても通用する人間に育ってもらいたい」ということです。もちろん転職させたいのではありませんが、基礎能力と専門能力とに分けて考えると、経営としては基礎能力の方をより重視しています。その点で、当社で実施している研修、ウチダ人材開発センタへお願いしているものも含め、親和性が高いと思っています。若手社員から「これほど研修が多い会社はない」と言われることもあります。今後も教育だけは、どの会社にも負けないレベルで、社員に絶対的なアドバンテージを与えたいと思っています。
人財育成体系

岩田社長:新卒社員もキャリア採用社員も、必要に応じて同様に研修へ参加しています。全員が共通して参加するプログラムもありますが、各自の目指す方向性や、こちらが期待することに応じて、異なるプログラムに参加するケースもあります。
リーダー育成プログラムへの共感・効果

渡辺様:2年目以降になると、配属先の現場でのジョブトレーニングが中心となり、どうしてもその業務に集中する傾向があります。それに対しリーダー育成プログラムは、ヒューマンスキル・コンセプチュアルスキルを身に付けるものです。このスタンスがとても活きていると感じています。研修の場は、「部門の中で自分はどのような立ち位置にいるのか」「周囲からどのように見られているのか」「周囲とどう関わるべきか」といった視点に立ち返る非常に良い機会となっています。毎回実施する受講後アンケートの感想からも、日常業務に追われる中で、研修が自分自身を省みるクールダウンの時間にもなっているようです。年数を重ねると、5年次・6年次には実践編へと移行し、グループワークなどを通じてメンバーと協力しながら課題を解決していく内容になります。この中でファシリテーションを行ったり、優先順位をつけて物事を遂行したりと、まさに協働力が強化されていきます。特に当社の場合、北海道から九州までの社員が集まり、新卒・中途を問わず参加するため、互いに良い刺激を受ける場にもなっています。同じ研修を受講することで横のつながりが強まり、この経験を今後の日常業務に活かそうという意欲が生まれるという点でも、高い効果があると実感しています。
インプットだけでなく、グループワークによるアウトプットの機会も、プログラムの中でしっかりと用意されています。序盤に受講する『文書コミュニケーション研修』は、受講前には「文書の書き方はもう知っている」と思っている社員も多いと推測されます。しかし、受講後のアンケートを見ると、文書の書き方そのものではなく、「相手に分かりやすく伝えるにはどうすればよいか」「伝える際に何を考え、相手をどう捉えるべきか」といった、本質的な部分を学べたという感想が多く寄せられています。「メールはこう書きます」といった初歩的な内容にとどまらず、コミュニケーションの本質に迫る内容となっており、当社の社員にとって確かな糧になっていると実感しています。
リーダー育成プログラムに対しての課題感
渡辺様:欲を言えば…、2年次研修の段階でも3〜4年目以降を見据えた視点を取り入れた講義や演習を含めていただけると、より効果的ではないかと感じています。少し難しい内容でも、受講者にとってこれからのキャリアに必要な要素を具体的に示してもらえることで、さらに成長への意欲が高まるのではないでしょうか。
今後の人財育成について
渡辺様:新卒1期生として入社したメンバーが、そろそろ課長職に差し掛かる時期を迎えています。彼らは、私たちが構築してきた育成体系のもとで成長し、自らを振り返りながら、後輩の育成にも目を向け、年次を重ねるごとに責任範囲が広くなってきた人たちです。たとえば営業マネージャーであれば、「どう売上を上げるか」が究極の目的となります。その目標に向かうためには、部下をどうマネジメントしていくかという視点が不可欠であり、育成の次なるステップを検討していく必要があります。彼らが、人事が用意した育成プログラムだけでなく、自ら考え、主体的に部下を育成していく姿を見るのは非常に頼もしく、今後の成長が楽しみでもあります。そして、そうした段階に達した時、人事としては次に何が必要となり、どのような支援が求められるのかを見極め、新たな育成方法を考えるフェーズに入っていくのではないかと考えています。
岩田社長:以前は「35歳問題」と言われていたものが、最近では「30歳問題」として語られるようになり、30歳を迎える頃から多くの人がさまざまな悩みを抱え始めます。特に女性の場合、結婚、出産、育児を考えると、より早い時期に今後について悩み始める傾向が見られます。もう一つの課題はミドル層への教育です。これまでの育成メニューを振り返ると、新任マネージャー向けの研修程度しかなく、それ以外は各自が自ら学びの機会を探す必要がありました。しかしミドル層は継続的に学び続けることが重要だと考えています。時代の変化に対応するためにも、基礎能力や論理思考を高めるための学びを継続できるような成長の場がグループにあればいいと思います。
また、研修における様々な問題解決手法の中に、生成AIを含むツールを組み込んだ独自の方法論の活用が想定できると、当社として課題感を感じている30歳前後の人やミドル層の研修テーマへの応用をはじめ、グループ全体の人財育成の水準がさらに高まることにつながると期待しています。

ご協力:株式会社ウチダシステムズ 様