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株式会社Globable様共同企画 第一弾!
「デジタル活用」の前に知っておくべき
新規事業企画・新商品開発の基本

DX推進に求められる「業務改善・改革」「価値創出」「新規ビジネスモデルの構想と実現」「推進部門の在り方」「部下・メンバーの育成」について、悩んでいらっしゃいませんか。自ら教育分野に問題意識を抱き起業したのち、長年、自治体や教育機関でのアントレプレナーシップ教育やキャリア教育に携わるグローバブル社の樋口氏がその重要なエッセンスを3つのテーマでまとめました。

第一弾 「デジタル活用」の前に知っておくべき新規事業企画・新商品開発の基本
第二弾 「今の仕事」って何?AI導入の前に考えなければいけないこと
第三弾 「主体的に仕事を創る人」を育てる組織やその人材育成方法

現在DX推進部門で責任者やリーダーとしてご活躍をされている方やこれからDX推進を行う法人様のご参考になれば幸いです。

第一回目は、【「デジタル活用」の前に知っておくべき新規事業企画・新商品開発の基本プロセス】と題し、新しい価値創造の際に有効な手法の一例として最近よく見聞きする「デザイン思考」について少し掘り下げその考え方をお伝えします。 

今回は・・・

 
 
DX(デジタルトランスフォーメーション)」を推進するにあたって、「デジタル化」「デジタル活用」にフォーカスが当たっている昨今ですが、その意識や取り組みだけでは車輪の片方に過ぎず、手段が目的として終わってしまうことも懸念されます。本来のDXを推進していくためには「トランスフォーメーション」を真剣に考え取り組むことが必要です。

それは一見、ある特別な集団が行う高度な行動と捉えられたり、その機会が今まではなかった方も多いと思います。新しい価値や新サービスの開発というのは特殊なものであって、先天的なセンスや高度なスキルが必要ではないかと感じる方も多い印象です。もちろん中には、持ち前の発想力などの才能を発揮される方もいらっしゃいますが、全ての方がそうではありません。アイディア創出にまつわる思考法を取り入れることによって、十分に、練習・訓練を通しどなたでも取り組めることではないかと考えています。

今回は、より多くの皆様が新規事業企画・新商品開発等の機会で力を発揮いただけるように、価値創出、アイディア創出する際の基本的な思考法としてよく活用される「デザイン思考」の考え方、そのポイントをお伝えしていきます。

■ デザイン思考とは

「デザイン思考」は、米国のデザインファームであるIDEOが自社のアプローチを概念化した発想法です。既存技術を改良する従来の延長線上ではなく、革新的なものを創造するために役立つ手法の一つと言われています。
IDEO社・CEOのティム・ブラウン氏は、以下のように定義しています。

「デザイン思考は、デザイナーのツールキットを利用して、人々のニーズ、テクノロジーの可能性、ビジネスの成功要件を統合するイノベーションへの人間中心のアプローチである。」

Design thinking is a human-centered approach to innovation that draws from the designer’s toolkit to integrate the needs of people, the possibilities of technology, and the requirements for business success.

出典: https://designthinking.ideo.com/

デザインファームが仕事に取り組む上でのプロセスや視点、思考を体系化したものが「デザイン思考」と言われています。具体的には、5段階のプロセスやそれにおける重要な観点や姿勢があります。5段階のプロセスとは、「顧客への共感」「問題の定義」「アイディアの創出」「試作品を作る」「その試作品を提出する」です。

※デザインファームとは、デザインを基軸としながら、顧客体験設計やリブランディング、新規事業創出などデザイン以外のビジネス領域も手掛ける企業や組織を指します。

それぞれの重要な観点や姿勢(スタンス)としては、以下の通りです。
「顧客への共感」は、顧客が発していること(表出的な価値)から「顧客は本質的に何を求めているのか」を考え、こちらから価値を見つけていく姿勢の「共感」を表しています。
そして「問題定義」とは、共感の際に分かった顧客のニーズから、本質的に求めていることを探っていくことです。
 

「アイディアの創出」では、恐れずにアイディアをどんどん出していくことがポイントと言われていますが、それは「あらゆる可能性を探る」ということの重要性を説いていると考えています。アイディアを出すために様々な工夫を行う必要もあります。例えば「絵だけを使って」「一番悪そうな」など、普段はとらないような制約を与えるなど、違う視点で考えることができるように工夫します。そして「アイディア創出」のプロセスでもっとも大事なのは、「アイディアを出す」「出てきたアイディアを評価する」という2つの段階を混在しないことです。「これはいいアイディアかな」「こんなこと言ってもいいのだろうか」と思いながら恐る恐るアイディアを発言しがちですが、そういった良し悪しは抜きにして数多く、自由な意見をアウトプットします。よって、出てきたアイディアを一旦保留するフェーズも設けます。

「プロトタイプ&テスト」では、スピード感が重視されます。出した仮説やアイディアが本当にユーザーにとって価値ある内容か、機能するのか、満足できるのか、といった点のフィードバックをもらうことを目的に、なるべく早い段階で試す姿勢が必要です。たとえ不完全な状態であっても、顧客がイメージできる状態のプロトタイプが準備できれば十分です。
「プロトタイプ」について少し補足すると、製造業やモノづくりの現場で言えば、手に入りやすいより安価な素材を使って制作する、というようなイメージを持つことができますが、サービス業などに置き換えると最低限お客様がイメージできる状態(提案書や体験等)を整え、提示することを想像いただければと思います。

「デザイン思考」について、より詳しく知りたい方は以下の文献等も参考にしてみてください。
①ティム・ブラウンによるデザイン思考の書籍「デザイン思考が世界を変える」
https://00m.in/nKCnF

②デザイン思考家が知っておくべき 39 のメソッド (和訳されたもの)
https://designthinking.eireneuniversity.org/resource/textbooks/39/

■ デザイン思考を活用する際のポイント、留意点

1.プロセスにおけるすべてのアウトプットは仮説にすぎない

5段階のプロセスをご説明しましたが、それらを一通りなぞれば終わりではありません。「デザイン思考」の重要な点に「全ては仮定でしかない」という考え方があります。繰り返すことが重要であって、その全てのプロセスは「仮」のものであるという考え方です。

私が実施している研修では、ペアやグループになって、ユーザー役の方にインタビューをし、その方のニーズに応える商品・サービスを考える、といったワークをします。相手の表出的なニーズではなく奥のニーズを探ることを意識して取り組んでいただきますが、そう簡単にはいきません。最初の仮説はあてずっぽうになることも多々ありますが、そういったことでも考え、フィードバックを受けることを繰り返していくうちに本質的な事柄にたどり着くことがあります。「仮説」であっても「プロトタイプ」であっても、本当のニーズや新たな情報を探るための道具でしかありません。その考え方が根底にないと、全てのプロセスでどうしても変化に抵抗感を感じてしまい、発展的な創造ができないことが見受けられます。仮説やアイディア、プロトタイプ、いずれも仮であり、フィードバックを受け、それに対して変化をしていく。アイディアの形成とフィードバックを繰り返し恐れずにやってみることが、本質的な課題の引き出しやそれに対する価値創出、アイディア創出に繋がります。

2.「精神的な壁」を取り払った方がうまくいく

「精神的な壁」とは、「まじめなアイディアを出さないといけない」「最初に決めた課題設定を変えてはいけない」「ちゃんとしたもの、きれいなものを作らないといけない」など今までの経験から培ってきた物事に向き合う姿勢や概念です。そのこと自体は悪いことではないのですが、ことアイディア創出や価値創出といった場合には、「〇〇しなければならない」のマインドロックを外したほうが画期的な事柄が創造しやすいです。
デザイン思考のプロセスを進めていくときに、最終的に全てのプロセスに付きまとうのが「精神的な壁」であり、それが創造性の妨げになっているということに、私も研修を実施しながら気づきました。学生から社会人まで、様々な方との時間を共有できたからこその気づきでもあります。実際の活動や研修時には、自身やメンバー、受講者の色々な発言や行動に注視しながら、外せるマインドロックは外していく、ということを心掛けています。
グループやチームで物事を進める際に必要な「心理的安全性の確保」で言われる、誰でも自由に意見が言える、提案ができる、創造できるといった場の設定も、価値創出には深く関係しているのではないかと思います。

3.自分とも仲間とも「コンセンサス」をとる

全てのプロセスを個人あるいは仲間で実施するにしても、そのプロセスや状況に対して「コンセンサス」をとることが重要です。具体的には、今はどのプロセスの部分なのか、「アイディアを出すのか」あるいは「評価をするのか」、「この制作はプロトタイプなのか」あるいは「完成品を作るのか」といったことです。その意識や目的がずれてしまうと、議論や制作に関しても混乱が生じるだけではなく、今後のプロセスにおいて顧客からのフィードバックも正しく得ることができません。
今の状況とプロセス、物事に対する目的は必ず共有するようにしましょう。「デザイン思考」を活用して物事を進めていくことに対するコンセンサスも、もちろん必要です。

今回は「デザイン思考」とは何か、またそれを活用する際のポイントについてお話をしました。
「デザイン思考」は決して万能なツールではありませんが、アイディア創出、価値創出といった段階で、この「デザイン思考」を活用してみていただければと思います。
デザイン思考を始め思考法やフレームワークを使いこなすためには、知識を持っているだけでよいわけではなく、活用して、自分の方法として浸透させていくことが必要です。
そういった機会を重ねていくことで、反射的に動いてしまう思考の制御だったり、切り替えだったり、思考の使い方のバリエーションを増やすことにも繋がります。「デザイン思考」もその一つとして、まずは「試してみる」といった感覚で、ぜひ活用してみてください。

次回は、少し視点を変えて、現在注目度が高い「生成AI」を始めとした様々なAIを活用する、業務の補助として導入する際に考えておかなければいけないことについてお話しようと思います。



話し手:株式会社Globable 代表取締役 樋口 匠 (Takumi Higuchi) 氏

運用系エンジニア・学習塾教室管理者を経て、2012年、演習中心の企業研修を提供する研修会社(株)グローバブルを創立。社会人向け研修だけでなく、大学の地域連携・企業連携のサポートや自治体の起業家支援イベントの運営、中学生・高校生の課題解決教育・キャリア教育などにも携わる。
創業当初より研修設計・教材開発を担当しており、その経験を元にした新商品企画やビジネスプラン作成教育を小学生から社会人まで広く提供している。
 
 
インタビューア、記事制作:株式会社ウチダ人材開発センタ 販売促進課

● 関連研修

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